(5)神代の昼メロ?
出来たばかりの無人島に若い男女が二人っきりで・・・何が始まるか想像に難くないと思います。そうなんです・・・(なにが?)
いきなり伊邪那岐命が伊邪那美命に訊きます
【汝が身は如何に成るや?】 翻訳すると「あんたの体はどうなっているの?」
伊邪那美命答えて
【吾が身は成り成りて成り合わざるところ一処在り】 翻訳すると「私の体は出来上がってはいるけれど、一か所閉じてないところがあります」
すると伊邪那岐命が
【わが身は成り成りて成り余る処一処あり】 翻訳すると「私の体は出来上がってはいるけれど、一か所余っているところがあります。」
エ~~ト私の創作じゃなくて二人の会話です、念のため申し上げておきますがこのお二人神様です。
さらに会話は続きます。
伊邪那岐命が
【吾が身の成り余る処をもちて汝が身の成り合わざる処を刺し塞ぎて国土を生成り生むは如何にやと思う。】 翻訳すると「私の余っているところであなたの足りないところを刺し塞ぎ国を作り生むのはどうですか?」
くどいようですが、これ神様のお言葉です。
すると伊邪那美命が
【然り 良き哉】 翻訳すると「わかりました いいですね!」
はい「ナンパ成功」ってオイ、原文には【於是其妹伊邪那美命日汝身者如何成】とあります
漢字だらけで読みにくいですが意味は「ここにその妹伊邪那美命に問う、汝の身はいかに成るや?」です。
現代の感覚ですと妹とは妹人(いもうと)であり同腹の女の兄弟をいう(大辞林第三版の第一義)だとすると妹をナンパしたことになります。チョットあぶないです。
神世七代の三番目以降は前述のとおりペアの神様で、女神の前にかならず妹と書いてあります、ですからすべて兄弟(妹兄・いもせ)と解説してあることも多いですが、これですと伊邪那岐命は妹と結婚することになってしまいます。この時代(飛鳥から奈良時代)には有ったとしても多くはなく古事記の中でさえ妹兄の恋に悩む物語が出てくるほどです。
ですからこの【妹】の意味は、「男性がじぶんの恋人や妻をいう言葉」と考えた方がいいかと思います(前出の第二義)
じじつ神世七代は七代にわたっていますが最初の二人は独神ですし、その後も各代のあいだで親子関係はなくあらためて現れた神様と思いますので「妹=愛しい人」と考えましょう。
はい これで無事ナンパ成功(めでたしめでたし)
続いて
伊邪那岐命いわく
【然者吾与と汝とは是の天の御柱行き廻りて逢いて美斗能麻具波比を成せむ】
翻訳します
「じゃぁあなたと私でこの柱をぐるっと回って出会ったところで【美斗能麻具波比】(みとのまぐあい)をしましょう」
「みとのまぐあい」を説明しますと、まず「みと」→御所→寝所です(の)「まぐあい」→目合い→交合い→性交です。 エ〜ト皆さんついて来れてますか〜?
伊邪那美命いわく
【汝者は右自より廻りて逢い、我者は左自より廻りて逢わむ】
翻訳します
「あなたは右回りね、私は左から回って行って逢いましょう。
この後グルッと廻って出逢い
【伊邪那美命が先にいわく】
【阿那邇夜志愛袁登古袁】原文注釈によりますと漢字には意味はなく音に漢字を当てはめたそうです。
読みは「あやによし えをとこを」です。
翻訳します
「あァ〜なんていい男なんでしょう」
【伊邪那岐命が後にいわく】
【阿那邇夜志愛袁登賈袁】
読みは「あやによし えをとめを」
翻訳します
「あァ〜なんていい女なんだろう」
【各言竟之後告其妹日女人先言不良雖然久美度邇興】
ずらっと漢字が並びました。
読みは「おのおの言い終えしのち その妹にのたまわく 女人の先に言うはよからざれど
しかくすべき。」
翻訳します
「二人が話し終えたのち伊邪那美命に言いました、女の人から先に声をかけたのはよくないけどマァいいか、さぁ頑張ろう」
上の続きです
【而生子水蛭子比子者入葦船而流去】
読みは「そして産みし子は水蛭子(ひるこ)にてこの子は葦船に入れて流し去る。」
翻訳します
そして生まれてきた子は、蛭子(おそらく形を成さない子)で、この子は葦船に入れて流した
(がんばったらすぐに生まれました、不思議)
【次生淡嶋是亦不入子之例】
読みは「つぎに淡嶋(あわしま)を生みき、これまた子のたぐいにいれず。」
翻訳します
つぎに淡嶋という子を産みましたがこの子も子の仲間には入れませんでした。
がんばって子作りしても国(※7)は生まれませんでした。もしこの二人を字面どおり兄妹とすると
このような話が東南アジアや日本の先島諸島の神話に当てはめることが出来ます。
その神話では兄妹が結ばれた時には最初の二人ないし三人はうまく人として生まれてこないとされています。
それにしてもポコポコと生まれます、神様には妊娠期間がないのでしょうか。それとも今の時間の概念ではなく悠久の時間を持っているので十月十日など一瞬なのかもしれません。
ここまで原文➡読み➡翻訳と書いてきましたが、だんだんと面倒くさくなってきましたので原文を参照するのは必要最小限にして先を急ぎたいと思います。
さて がんばって子作りして産んでも【今吾らが生みし子、不良(よからず)】と言い二人で相談した結果、「いっぺん二人で天上にもどって天津神に子作りの方法を教えてもらおう」ということになりました。
エ~~ト 適当に書いているのではありませんので決してこの本を閉じないでくださいね
じつはわたしも漢字だらけで面倒くさくて日本最古の歴史書としてさんぜんと輝く古事記には、さぞ私なぞが知りえない深い歴史の深淵が隠されているのだと思っていましたが、まさか神様が神様に子供の作り方を教えを乞うくだりが出てくるとは思いもしませんでした。
だからこの本が好きなのかもしれません。
天津神が【布斗麻邇(ふとまに)】(コラム参照)で占ったのち詔(のたまわく)
【女(おみな)の先に言ふに因りて不良(よからず)亦還り降りて言(こと)を改む(あらたむ)
べし】。
最初に天御柱を回って声をかけたのが伊邪那美命(女)の方でしたのでこれが良くなかった、もう一度戻って最初からやり直してちょうだいってことでした。(コラム2参照)